連載企画「半導体産業の現状と未来」第 5 回:半導体とは何か(2)広がりつつある製品群

2023 年 2 月 16 日 - 午前 8:00
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現在、半導体の主流に使われている材料はシリコン(Si)です。シリコン半導体は集積化できることが価値として発展してきました。通常、半導体という言葉にはシリコンという言葉が使われることもあります。特に、コンピュータに使われるマイクロプロセッサや SoC(システムオンチップ)などを指すことが多いようです。

シリコンは高集積化に価値

シリコンは IC(集積回路)を生み出し、1 枚のチップに集積されるトランジスタ数は毎年増えてきました。このことを集積化が進むと言います。1965 年にフェアチャイルドセミコンダクターにいたロバート・ノイス博士が、製品化されたICに集積されるトランジスタ数は毎年 2 倍のペースで増加する(図 1)、と述べました。これは、当時製品になったICに含まれるトランジスタ数と発売された年との関係から導き出した経験則です。その後、この「ムーアの法則」は 18~24 カ月に 2 倍のペースに修正されましたが、半導体ICはムーアの法則に沿って集積化が進んできました。

図1 ムーアの法則 出典:IEEE、Electronics 誌

シリコン上にトランジスタが集積される理由は、トランジスタをプリント回路基板上に搭載する電子回路ボードの性能が増し、消費電力が減り、コストが下がるからです。「天は二物を与えず」ということわざがありますが、シリコンに関しては二物も三物も与えられてメリットが多いのです。

ただし、特殊な用途ではシリコンが使われずに化合物半導体が使われています。ガリウムひ素(GaAs)やInP(インジウム燐)、さらにそれらの混合物(例えば GaAlAsP など)は光通信のレーザーや受信機として使われています。シリコンは通常光らないからです。LED としての材料でも GaN(窒化ガリウム)は青色 LED や照明用の LED として使われています。さらに数十 A(アンペア)という電力のオンオフを行うパワートランジスタの材料としても SiC 半導体やGaN半導体が注目されています。

半導体製品の種類は豊富

半導体製品を大きく分けて、トランジスタや、ダイオードなどのディスクリート(個別)半導体と、ICがあります。もっと細かく分けると、光デバイスやセンサ、アナログ IC、デジタル IC などに分かれ、さらにデジタルICでは標準ロジックや CPU(中央処理制御・演算を担う)プロセッサ、GPU(絵を描くグラフィックスプロセッサ)、DSP(積和演算専用のプロセッサ)、ISP(写真やビデオなどの映像を処理するプロセッサ)、メモリ、レジスタなどがあります。アナログICではアンプやコンパレータ、A-D コンバータ、D-Aコンバータ、電源用ICなどがあります。おそらく全部で数千~数万種類あるでしょう。新しいシステムが登場するたびに集積化して新しい IC が生まれてくるからです。

ただ、一般的に集積度が向上すればするほど決まった回路に固定され専用チップとなります。そうするとたくさんのユーザーがそれを使うとは限りません。そこで、生まれたのがコンピュータ方式の IC です。コンピュータチップを作っておけば、ソフトウエアを入れ替えたり追加したりすることで新機能を加えることができます。こういった考えで、Intel社はマイクロプロセッサとメモリを発明しました。

半導体を発展させた CPU とメモリ

余談ですが、個人的にはマイクロプロセッサとメモリを発明した Intel 社のエンジニアこそノーベル賞を与えられるべきだと信じています。この二つがなければ半導体は現在ほど発展しなかったからです。現代社会のほとんど全ての電子システムやITシステムは CPU とメモリで動いています。

マイクロプロセッサは当初、電卓チップとして始まりました。Intel 社のフェデリコ・ファジン氏をリーダーとしてテッド・ホフ氏、スタン・メイザー氏、嶋正利氏の 4 名がマイクロプロセッサを設計しました。メイザー氏と嶋氏は顧客でしたが、一緒に設計開発しています。Intel 側は電卓チップを A 社向け、B 社向け、C 社向けにそれぞれ開発することは効率が悪いと考え、一つのチップを作りソフトウエアを変えることで A 社、B 社、C 社に対応しようと考えました。この考えがコンピュータなのです。

マイクロプロセッサは主に Intel 社が性能を追求して、当初の 4 ビットから 8 ビット、16 ビット、32 ビット、現在の 64 ビットへと発展してきました。メモリはコスト効率の良い DRAM が何億回書き換えても劣化しないメモリ(RAM)として発展しましたが、揮発性であるためシステムの動作中しか使えません。しかし、電源をオフしても記憶内容が消えないフラッシュメモリを東芝のエンジニアだった舛岡富士雄氏が発明してからはストレージデバイスとしての地位を築きました。

メモリとプロセッサを利用するコンピュータシステムは、パソコンやサーバといったコンピュータだけにとどまらず、マイコン(MCU)として冷蔵庫や洗濯機、電気釜、掃除機、テレビ、録画・録音機などの家電製品や携帯電話機などにも入り込んでいます。コンピュータと同じ CPU とメモリ、ストレージ、周辺回路インターフェイスなどを使ったシステムのことを組み込みシステムと呼び、これがあらゆるシステムに使われ、進展してきました。これからもスマートシティやスマート社会などスマートxx時代には組み込みシステムがますます使われるようになります。


著者:津田 建二
国際技術ジャーナリスト、セミコンポータル編集長
現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリストとして活躍。長年、半導体・エレクトロニクス産業を取材。ブログやメディアを通じて半導体産業にさまざまな提案をしている。海外の技術ジャーナリストとも幅広いネットワークを持つ。

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