連載企画「半導体産業の現状と未来」第 6 回:現在の半導体産業構造(1)IDM、ファブレス、ファウンドリ

2023 年 3 月 9 日 - 午前 8:00

現在の半導体産業の形態には、大きく分けてほぼ三つの形態があります。一つは昔からの IDM と呼ばれるもので、半導体の設計からプロセス、パッケージングまで手掛ける垂直統合のメーカー、二つ目は工場を持たないファブレスメーカー、三つめはプロセス製造サービスを手掛けるファウンドリです。ここでは、それらについて紹介しましよう。

世界の半導体企業ランキングは、半導体製品を作っているメーカーの売上額を上位から並べたものです。市場調査会社のガートナーが調べた 2022 年の半導体トップテンランキング(表1)では、第 1 位は韓国の Samsung、2 位が Intel、3 位 SK Hynix となっています。つまり、メモリメーカーの Samsung、SK Hynix、Micron の 3 社 と Intel、TI(Texas Instruments)は IDM あり、残りの Qualcomm、Broadcom、AMD、MediaTek、Apple の 5 社はファブレスです。ファウンドリは製品をファブレスや IDM から請け負うサービスですのでブランドのないサブコントラクタとして扱われます。

表1 2022 年の世界半導体トップ 10 社ランキング 出典:Gartner

IDM としては、メモリメーカーと Intel、そしてアナログメーカーの 3 つがあります。メモリの設計は比較的単純です。1 ビットのメモリセルさえ設計できれば、それをずらりと数十億個並べるだけであり、それ以外は読み出し・書き込み・消去回路だけです。このため設計よりも、製造工場の生産能力が勝負を決めます。つまり昔ながらの大量生産製品なのです。このため、資金力のある企業が勝ちます。

また Intel はマイクロプロセッサを設計製造していますが、平均単価が極めて高く、メモリの約 10 倍高価です。このため Intel は工場を持っていてもやってこられたのです。その Intel でさえ、最先端の微細化プロセスノードでは資金力が不足し、ファウンドリビジネスを始めました。

アナログメーカーは、回路設計に価値があり、製造プロセスはそれほど微細化しなくても済みますので、工場の運営コストは安く済みます。また、アナログ IC の MOS トランジスタは、そのまま微細化するとかえって性能が落ちることがあります。ゲートの配線抵抗が高周波特性や過渡電流に悪影響を及ぼすからです。

ファブレスメーカーの強みは新機能と設計力

ファブレスメーカーは、何ができるのかという機能で差別化しますので、設計が重要になります。このため、それぞれのファブレスメーカーで特長があり、他社との違いを明確に出しています。例えば Qualcomm や MediaTek は携帯電話仕様の 4G や 5G のモデムやコンピューティング機能が優れたチップを開発しています。また Broadcom はデータセンターなどのハイエンドコンピュータのネットワークに強く、これもまた他社を引き離しています。AMD は、かつて X86 アーキテクチャの CPU に力を入れていましたが、最近は PC ゲーム用の GPU チップにも力を入れるとともにデータセンターなどのハイエンドコンピューティングにも注力し、FPGA の Xilinx を買収しました。

ファブレスメーカーは、1980 年代中ごろから続々と誕生し、今では全 IC 産業の 35% 前後を占めるように成長しました。ファブレス半導体の特長は、機能ですからメモリではなくロジック系の半導体製品を作る企業が多いのです。ただし、特殊なメモリやアナログ製品でもファブレス企業はありますが、規模はまだ小さいです。彼らの設計したマスクデータを基にファウンドリが製造します。

ファウンドリは TSMC の一強

ファウンドリは製造を受託生産するサブコントラクタです。台湾の市場調査会社 TrendForce によると、2021 年のファウンドリ産業は 1075 億ドルの規模でしたが、2022年はそれよりも 28.1% 成長したため 1301 億ドルになったようです。半導体市場規模は 6017 億ドルですから、半導体全体の 21.6% を占めています。

ファウンドリのトップメーカーは言うまでもなく TSMC で、市場シェアは 56% 前後になっています。これは TrendForce が発表した 2022 年第 3 四半期におけるファウンドリのトップ 10 ランキング(表2)によるものです。これによると第 2 位の Samsung はシェア 15.5%、3 位は台湾の UMC でシェアは 6.9%、4 位は米 GlobalFoundries で同 5.8%、5 位が中国 SMIC で同 5.3% となっている。TSMC のシェアは 2022 年第 2 四半期では 53.4% だったため、ますます寡占化されています。

表2 世界のファウンドリメーカートップ10社ランキング 出典:TrendForce

ファウンドリ産業は、台湾が圧倒的に強く、韓国の Samsung は 2 位にいるものの同社のシステム LSI 部門の売り上げも含んでいるため、実際のファウンドリ部門の売り上げはもっと低いとみられます。また、5 位 6 位と中国勢もいますが、そのシェアも低いです。日本でもラピダス社が 2022 年 11 月に活動を始めたものの、思うように人材が集まらず苦労していると聞いています。しかし 2025 年ごろから量産する予定ですのでそれに向けて頑張っていかれることでしょう。


著者:津田 建二
国際技術ジャーナリスト、セミコンポータル編集長
現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリストとして活躍。長年、半導体・エレクトロニクス産業を取材。ブログやメディアを通じて半導体産業にさまざまな提案をしている。海外の技術ジャーナリストとも幅広いネットワークを持つ。

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