連載企画「半導体産業の現状と未来」第 1 回:日本でも半導体産業の重要性が広く認められるようになった

2022 年 8 月 16 日 - 午前 8:00

連載企画「半導体産業の現状と未来」をスタートします。
半導体・エレクトロニクス産業を長年に渡り取材してきた、国際技術ジャーナリストの津田建二氏が、半導体業界の歴史や半導体技術、さらに未来を語ります。

第 1 回:日本でも半導体産業の重要性が広く認められるようになった

半導体は成長産業です。世界ではそのことは常識なのですが、日本ではようやく最近になり半導体不足がラジオやテレビの話題にも上り、半導体の重要性が話題に上るようになりました。日本政府は、半導体産業に特別な予算を組みました。日本の半導体を再興させる足掛かりとして、TSMC を熊本とつくばに誘致しました。生き残っているルネサスやキオクシア、ソニーなどの大手半導体メーカーの投資にも支援します。

半導体産業は広がり、民生・工業から社会へ、IT 産業も個人向け・企業向けから社会向けへと向かっています。いずれも社会というインフラシステム(スマートグリッド、スマートシティ、スマートプラネットなど)にも拡大しています。

そのような中、新型コロナによるロックダウンを契機に、半導体不足が社会的な問題となりました。半導体不足はテレビやラジオに採り上げられ、改めて半導体の重要性が世の中に知られるようになりました。筆者は、テレビに2回、ラジオに 3 回出演させていただき、半導体不足とそもそも半導体とは何かについてお話させていただきました。テレビ局・ラジオ局が半導体について知りたかったのです。

政府の支援も決定

日本政府は、6 月 17 日、台湾 TSMC とソニーグループ、デンソーが出資する半導体ファウンドリ工場の計画を認定、補助金を最大 4760 億円支給することを決めました。これまで経済産業省(図1)は「1 社のために補助金を出せないが、数社集まれば出せる」という方針を固く守ってきました。半導体産業ではさまざまなコンソーシアムを作っては先端と称する技術を共同開発してきました。しかし、そこで開発された技術を元の会社に持ち帰っても決して使われることはありませんでした。半導体専業メーカーではなく、総合電機という親会社がそれらの技術の重要性を認識できなかったからです。結局、コンソーシアムは全て失敗に終わりました。

図1. 経済産業省(出典:経済産業省ホームページ)

しかし、2020 年ごろに経産省の若手の官僚が、半導体産業は成長産業であることを理解し始めました。しかし国内の半導体メーカーの内、世界と競争できる売上額 5000 億円以上の大手企業は、ルネサスエレクトロニクス、ソニーセミコンダクタソリューションズ、キオクシアの3社しかいなくなりました。ただ、半導体メーカーが使う製造装置産業は日本がまだ強く、東京エレクトロンや SCREEN、日立ハイテクノロジーズ、アドバンテストなど世界を相手に堂々と戦って生きていますので、彼らを強化するためにも、TSMC を国内に誘致する活動を懸命にやり始めました。

TSMC は、つくばの産業技術総合研究所で 3 次元ICを開発するための研究センターを設置しました(図2)。ここで日本の材料メーカーと協力して 2.5D/3D-IC を開発します。信越化学や JSR、住友化学など日本の材料メーカーも世界を相手に堂々と戦える企業が多いのです。次に半導体製造のインフラ(水や半導体製造用特殊ガスなど)が充実している熊本に工場を建設することを TSMC とソニーが決めました。熊本の新工場にはデンソーも資本参加しました。

図2. つくばの産業技術総合研究所の中にある TSMC ジャパン 3DIC 研究開発センター(出典:TSMC ジャパン 3DIC 研究開発センターオープニングセレモニーで公開)

実際には TSMC はスマートフォン用のモバイルプロセッサやデータセンターのハイエンドコンピュータ向けプロセッサの生産に必要な最先端の 5nm プロセスノードの製造を行っていますが、CMOS センサはそれほど微細化する必要がないので、22nm/28nm の製造を考えていました。しかし、デンソーは次世代の自動車にはもっと微細なチップが必要と考えており、10nm/16nm ノードの製造ラインも揃えようとしています。

日本には世界と勝てるスマホメーカーもコンピュータメーカーもいませんので、5nm/7nm プロセス工場を日本で建設する意味がないのです。TSMC は、自動車と半導体材料の分野が日本の強い産業だということを知っているようです。

スマート化、デジタル化に欠かせない半導体

これからの社会のニーズを考えると、やはり微細化プロセスは必要となります。AI でのインテリジェント化、ライセンスフリーの CPU コアである RISC-V 化などの新しい動きが出てきて、コンピュータはますます必要となるからです。それもコンピュータと同じ仕組みを使いながらコンピュータではない組み込みシステムに知らず知らずのうちに入り込み、システムをインテリジェント化します。スマートXXやデジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)などの実現にはプロセッサは欠かせません。しかもこれまでに得られたことのないほど低い消費電力、例えばこれまでの 1/10 といった省エネ化を半導体が実現するのです。

日本の半導体製造技術はまだTSMCとは全く勝負できないレベルですが、将来に向けたスマート化(インテリジェント化)には半導体は欠かせませんので、日本の半導体技術はいずれ目覚めることを信じています。

著者:津田 建二
国際技術ジャーナリスト、セミコンポータル編集長
現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリストとして活躍。長年、半導体・エレクトロニクス産業を取材。ブログやメディアを通じて半導体産業にさまざまな提案をしている。海外の技術ジャーナリストとも幅広いネットワークを持つ。

Related Articles

MediaTek 製品を搭載した Dolby Atmos FlexConnect、スマート TV 向け没入型オーディオのこれから

2023 年 9 月 19 日 - 午前 8:30

MediaTek Pentonic Smart TV プラットフォームだけが実現する MediaTek Intelligent View

2022 年 1 月 14 日 - 午前 11:47

テレビがもたらしてくれるコミュニケーションの上に構築する未来

2021 年 11 月 16 日 - 午前 11:30
MTK Highlights

Sign up for our monthly newsletter

EXECUTIVE INSIGHTS | LATEST NEWS & EVENTS | PRODUCTS & TECHNOLOGIES